住宅の工業化が進んできてから、一般住宅に適した素材は何がいいのかの議論がたびたびおこなわれます。
その際に比較検討される素材は
【 木 】【 鉄 】【 コンクリート 】この3つが代表的な素材です。
ハウスメーカーでは、これらの構造材を売りの一つとして【 特徴 】にしています。
その多くは、軽量鉄骨・重量鉄骨・鉄筋コンクリートと工業化されたメーカーです。作る側(ハウスメーカー)から見た利点、買う側(消費者)から見た利点と2種類あると思いますが、筆者からすると、これらのメーカーは、作る側(ハウスメーカー)からの視点が強く、ビジネスとして作られている気がしてなりません。
今回は、木造住宅の優位性についてみていきたいと思います。
建築資材としての木材の優位性
他材料に対して、木材が優れている点
- 再生可能
- 低コスト
- 地球温暖化防止に貢献
- 調湿性
- 熱伝導性
- 耐火性
- 吸音性
- 薬用性
- 断熱性
- 防虫性
- 耐久性
- 保温性
- 親和性
- 森林浴効果
このように、様々な性能・効果により人が住む住宅として優位に立っているのです。
再生可能
木は、私たち地球に住む人にとって最も適した材料です。
昔は、センター柱を使わない限り大きな建築物を作ることは難しかった時代でしたが、いまは建てることができるようになってきました。しかし、腐ったり、燃えたり、シロアリや腐朽菌に弱いという一面を持ち合わせているのは事実です。
これは、気が生物起源であることの宿命ですが、言い方を変えれば再生が可能な素材ということです。利用して、土にかえり、また利用する。
低コスト
木は、鉄やコンクリートなどの建築材料よりも低コストで住宅建設が可能です。ローコスト住宅を提供しているメーカーに鉄やコンクリートを利用した住宅を作っているところがないことからも、工業化して工程を簡略化することが必要だからです。
地球温暖化防止に貢献
鉄やコンクリートなどの建築用資材は、製造す過程で多くのエネルギーを使用し、二酸化炭素を多量に排出しています。
これからの時代に、CO2排出を増やすことは世界の考え方にも反しています。
その点、木は製造する過程でのエネルギー使用量が少なく、伐採された後も伐採前に蓄えた二酸化炭素を内部にストックしているのです。
調湿性
木は、湿気を吸い込んだり、吐き出したりすることができる特徴を持っています。木の家に遊びに行くと、コンクリートマンションなどの様な湿度を感じないのはこのためです。
加工された後も、木は息をして湿度が高いと吸湿し、乾燥する時期は湿気を吐き出しています。
熱伝導性
夏暑い家か冬寒い家かの指標に、建物の構造材が何なのか?が決めてとなります。これは熱の伝えやすさが関係しています。
熱の伝えやすさ、伝えにくさの指標は【 熱伝導率 】というものです。
熱伝導率は木を基本とした場合、コンクリートより15分の1、鉄より約500分の1しか熱を伝えないのです。
焚火をするときに、火おこしをするための棒は何を使いますか。木の棒ではなく、鉄の棒を使った場合、焚火の熱が持ち手に伝わってきて、やけどを負う可能性があります。もちろん木にはそのようなことは起こりません。
構造材が木以外の素材になると、夏の強い熱が構造材を伝わり室内に入ってきます。冬の寒い冷気も構造材を伝わって家に入り込みます。
これは、家を暑く、寒くさせる原因の一つです。
このサイトの別記事で、住宅の断熱性能ランキングがありますが
ランキング表を見ていただくと、構造材の選択の違いで断熱性能がはっきりと分かれるのが手に取るようにわかります。
断熱性
断熱性は、熱をどれだけ断つことができるかを素材別に数値としてあらわす指標です。木と鉄とコンクリート住宅を比較していますが、さすがに鉄で覆われた家はお目にかかれませんし、船でも甲板デッキはウッドデッキで人にやさしい素材になっています。熱くて居れませんね。
木材とコンクリートはどうでしょう。コンクリートは木の約30倍から40倍熱を通しやすいことがわかっています。JIS規格より。
保温性
住みやすい家の素材は何がいいのか?を比較した代表的なテストに【 マウス(ねずみ)実験 】があります。
マウス試験:木・コンクリート・鉄で造った3つの箱で10組ずつのマウスを飼育した場合の生存率を検証する実験結果です。
どの箱でも80匹から150匹の子供が生まれていますが、外気温が25度から26度のとき、木で造った箱のマウスの生存率が90%だったのに対し、鉄の箱は50%、コンクリートの箱ではわずか5%程度しか生存できなかったのです。
この実験で得られた違いは、箱の保温性が関係しているということ。
人口的に造られたものより、自然由来のものが良いという結果です。
耐火性
「 木は燃えます! 」
鉄骨メーカーからよく聞く、営業トークです。もちろん正解です。木は燃えます。キャンプファイヤーでも鉄骨で組んでも燃えません。
しかし、住宅が火災になった場合にはまず生存する方法が一番大事になります。何が言いたいかというと、助かる為には逃げる時間の確保、もしくは助けに入る時間の確保が必要になります。
家が火事に合うと、室内温度は約10分ほどで800度に達します。これは何を意味するか、一般的に使用されている住宅の鉄骨は約5分で50%の強度が失われます。そして10分経ったときの800度で70%以上の強度が失われます。
木造の家はどうでしょう。鉄骨と同じく5分経過した段階では、強度が90%保たれており、10分経過した段階でも約80%を保っています。強度が50%を下回るのに要する時間は約20分。
この理由は、木材の表面が火により炭化して燃え進む速度が1分に6㎜と遅いことが要因です。
肝心の消防車が現場に到着する目安は約5分以内。この時間の中には、通報があってから消防車が出発するまでの消防隊員の準備時間約1分も含まれています。
助けに入れる・逃げる時間、構造はどちらが優位でしょうか。
耐久性
木は湿気や結露で腐朽菌が入り込み、腐ります。このような状態になると耐久性は一気に落ち込みます。
しかし、対策が可能な素材でもあるんです。
腐朽菌に必要な4つの条件
1.適度な酸素 2.水分 3.温度 4.栄養分
このうちの一つでも欠けると腐朽菌の繁殖が抑えられ木は腐りません。例えば温度は0度以下、水中では酸素がないので腐朽が起きません。
地球上で簡単にコントロールできるのが、水分の管理。この管理さえできればどんなに栄養分があっても、繁殖適温になっても木腐りません。
木の含水率を25%以下に抑えることで木は腐らないのです。
要は結露水をどう避けるかです。
薬用性
木の薬用効能
ヒノキ | 精神安定効果 |
ユーカリ | 呼吸器系の治療 |
ケヤキ | 循環器系の治療 |
ヒバ | 防虫・防蟻・防腐・水虫 |
ポプラ | 痔治療・流感ウイルスの減菌効果 |
ツツジ・モミジ | 黄色ブドウ球菌の減菌効果 |
イチョウ | 高血圧治療 |
ササ | 防腐効果 |
シラカバ・カシ・オレンジ | かぜ・ジフテリアの減菌 |
カバ | 殺菌 |
防虫性
ダニは木を嫌うのは、生物学的にダニの繁殖に適さないことと言われています。
アトピーや喘息を引き起こすアレルゲンが棲息しずらい木のフローリングが最適です。
森林浴効果
森の中に入り深く深呼吸すると、生き返ったような気分になります。これは、樹木が発散するテルペン類等の精油成分の働き、そしてフィトンチッドの効果によるものです。
フィトンチッド効果を実験したものに、マツ・モミ・ポプラ・カシ等の葉や、ニンニク等を細かく刻み、数センチ離れた場所にアメーバ・赤痢・腸チフス等の病原菌を置くと、これら微生物が短時間の間に、早いと数秒で死滅することがわかっています。
木をふんだんに使った家は心身ともにリフレッシュできる最適な素材なのです。
木の建造物は世界最古で実証済
木で造られてきた建造物は古く昔から存在します。
世界最古の木造建築物、法隆寺は1300年以上たった今も健在。
同じく奈良、正倉院は宝物がきちんと保存されています。これは適度な湿度や害虫から守られてきたことを意味します。