人が物を買うときにどのくらいの費用が掛かるのかを最初に計算する重要性を聞く機会がありました。
その人は、
車を買って生活したほうが良いのか?
車を買わずに公共交通機関のみを利用して生活したほうが良いのか?
を、「ライフタイムコスト」という計算で導いていました。
ライフタイムコストとは、一生の中でどの位のお金を使うか?という事。
人生で最大の買い物といわれる【 住宅 】
この住宅に係る費用は、住んでからの費用も合わせてどのくらいになるのか?
生涯賃金はサラリーマンで2億円程度といわれている中で【 住居に係る費用 】はどの位の割合になるのかを見てみましょう。
ライフタイムコストの計算
例えば、
一生のうちで移動に使うコストはいくらなのか?
このライフタイムコストは2種類あります。
「自家用車 VS 公共交通機関」
自家用車を使う場合のコスト
- 自家用車の購入費用
- 維持費
- ガソリン代(電気代)
- オイル交換(エレメント代含む)
- タイヤ交換(冬用タイヤ含む)
- 細かい消耗品代(ウォッシャー液)
- 洗車費用
- 駐車場代
- 自動車税
- 任意保険
- リサイクル料金
- 免許更新手数料
公共交通機関を利用した場合のコスト
- 交通費
電車・タクシーやバスなどを利用することを想定します。
この計算をした私の知人は、自家用車を持たないという結論に至りました。
こんなにも自家用車にかけるコストが莫大になるとは思わなかったといっているので相当に違いが出たのでしょう。
もちろん、住んでいる環境の違い、車を所有するという喜びなどは、人それぞれになるので一概にどちらがいいとは言えないものではあるのだけれど、ライフタイムコストとして、どこにお金をかけるべきなのかを判断するのには良い話を聞いたと当時は思いました。
家を購入する場合には【 ライフタイムコスト 】の計算は必要不可欠です。なぜなら!
- 人生の中で一番費用をかける割合が高い買い物になる!
- 人生で1回の買い替えの利かない買い物になる!
しかし、ほとんどの方が、ライフタイムコストの計算をしないで家を購入してしまうのです。と言うか、知らないのです。
参考に読みたい(下記タイトルは、後日別記事にします)
「住宅メーカーから紹介されるファイナンシャルプランナーの罠(わな)」
家のライフタイムコスト
永遠の課題!としていつの時代もどっちがお得なんだろう?と議題に上がる、
一戸建て(分譲マンション)VS一生賃貸
この答えを導くには、ライフタイムコストの計算が重要なポイントになってきます。
一戸建てに住む場合の光熱費や毎年かかる税金関係、経年劣化などのメンテナンス費用等々。
一生賃貸では、更新に係る手数料、家族人数の増減に対する借りる広さからくる家賃の変動。
住んでから、また年月の経過による費用算出の違いなど、ライフタイムコストで計算していかないと、どちらがお得なのかが出てきません。
住宅性能別ライフタイムコスト
今回は家を買った場合についてのライフタイムコストを性能別にみていきます
2017年現在、ハウスメーカーが扱う商品は皆すばらしいため、どこで購入しても大差ないのでは?
という意見も多く見受けられます。
そこで、確実に経済性として【 差 】がつく、目に見えるコストの違いを比べてみましょう。
ハウスメーカーの快適性を左右する断熱性能・省エネ性能は各社の家づくりへの想いが【 暖冷房費の差 】となって表れています。
暖冷房費の差 = Q値・UA値の差
Q値・UA値は、省エネ性能を表す断熱性能を数値化したものです。
この数値は0(ゼロ)に近いほど断熱性能が高くなり=暖冷房費が安くなります。
地域区分 | 1地域 | 2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | 8地域 |
次世代省エネルギー基準・Q値 | 1.6 | 1.9 | 2.4 | 2.7 | 3.7 | |||
H25年省エネルギー基準・UA値 | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | ー |
地域区分による主な地域 | 旭川 | 札幌 | 盛岡 | 仙台 | つくば | 東京 | 鹿児島 | 沖縄 |
次世代省エネルギー基準 Q値=2.7の住宅と 高性能省エネ住宅 Q値=0.51の住宅では
年間暖冷房費の違いが
Q値2.7=25.1万円に対して、Q値0.51=3.8万円となる差を出しています。
この差なんと、年間で21.3万円!
10年で213万円! 50年で1065万円!
住めば住むほど開いていきます。
※今回参考にさせていただいたのは、高気密高断熱住宅の先駆けの存在である、一条工務店の【 i-シリーズⅡ 】と省エネルギー基準の住宅を比較させていただいております。
参考ホームページ:詳細は一条工務店HP:30年後の未来の性能より
本当に侮れないですね。
一般的なサラリーマンの生涯賃金2億円とすると、約20分の1が暖冷房費の差として表れてきます。
そのほか、住宅本体の費用やメンテナンスなどの維持管理費用。
すべて合わせると5000万円を優に超えてくるのではないでしょうか。
すると生涯賃金の約4分の1、約25%が住居費用として費やされる計算です。
仮に性能が低い住宅が、性能の高い住宅よりも初期費用(住宅本体価格)が500万円安いとしても冷暖房費で500万円はお得に暮らすことができる計算ですね。
ローコストメーカーの営業トークの常套文句では、
「 500万円高い家を購入すると、高級車が1台買えてしまいますよ。 笑 」
このトークに惑わされてしまう購入者の方が多く居ると思いますが、上記の例でも分かるようにライフタイムコストで計算していくと、ローコストが高い買い物に繋がってしまうことが分かります。
Q値2.7の友人 A宅
実際にこの位の差が付くのか?という疑問も湧きますがQ値2.7の家にすむ友人に話を聞いて見ると・・・
” そこまでは冷暖房費がかからないよ! ちゃんと節電しているからね!”
と返事が返ってきました。
聞くと、” 暑さ寒さの我慢 ”はしているらしく、夜はエアコンを使わず扇風機で汗だく。
冬場は、できるだけ一つの部屋に集まって家族団らんすることで、余計な暖房費をかけないようにしているとのこと。
節電と言えば、聞こえはいいですが、我慢を強いられることになります。
Q値0.8の友人 B宅
もうひとりの友人宅は、Q値0.8程度の省エネ住宅ですが、暖冷房費を教えてもらうと年間4.8万円という答えが返ってきました。
特に我慢している様子はなく、暖冷房費の使用の仕方はできるだけ、つけっぱなしにしている様子。
こまめにスイッチを入り切りすると逆に光熱費がかさむことになる結果だそうです。
高気密・高断熱住宅の特徴の一つですね。
地域区分 | 友人B宅 | 1地域 | 2地域 | 3地域 | 4地域 | 友人A宅 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | 8地域 |
次世代小エネルギ―基準 Q値 | 0.8 | 1.6 | 1.9 | 2.4 | 2.7 | 2.7 | 3.7 | |||
改正省エネルギー基準 UA値 | ー | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | ー | 0.87 | 0.87 | 0.87 | ー |
主な地域 | 茨城 | 旭川 | 札幌 | 盛岡 | 仙台 | 千葉 | つくば | 東京 | 鹿児島 | 沖縄 |
この表に当てはめると、
友人宅Aは5地域区分の性能があるので省エネルギー基準を満たしています。が光熱費は高く
友人宅Bは1地域区分(Q値=1.6)の約半分0.8の超省エネルギー性を持った住宅は光熱費が4.8万円
Q値=断熱性能は0(ゼロ)に近いほうが暖冷房費が掛かりにくくなることは確かです。
改正省エネルギー基準(平成25年改正)はQ値からUa値へと世界基準に合わせる動きになりました。
しかし、突然基準値の単位を変えると消費者も混乱してしまいますので、現在は移行期間としてQ値とUa値が混在して表記がされています。
2020年の省エネルギー基準の義務化に向け、国や自治体そして各ハウスメーカーが動き出しています。
窓の性能の記事でもあったように、日本の家の性能は世界から見ると化石化してしまっています。
ランキングのトップにいるハウスメーカーはツーバイシックス工法のダブル断熱工法をアピールしています。
そのハウスメーカーの住宅性能(断熱性能)はQ値=0.51 Ua値=0.28となっていますが、
同じハウスメーカーというジャンルでありながら下位に位置する住宅性能はQ値=2.7 Ua値=4.6となります。
この数字の差が意味するものが、ライフタイムコストに直結する数値になるのです。
電気代でみるライフタイムコスト
断熱性能上位のハウスメーカーに住み続ける人と、下位のハウスメーカーに住み続ける人の生涯にかかる、電気代のライフタイムコストの違いを見て行きましょう。
同じ大きさの家で、同じ快適性で過ごす場合、断熱性の違いが冷暖房費に出てきます。
上位ハウスメーカーの1年間の電気代が約4万円に対して
下位ハウスメーカーの1年間の電気代は約25万円になります。
その差額はなんと21万円にもなります。
今検討しているそのハウスメーカーの断熱性能はどのくらいでしょうか。
年間21万円の違いで40年住むとします。単純な計算で840万円の違いが生まれるのです。
この違いをライフタイムコストに例えると・・・
上位メーカーA:初期購入費が2500万円+電気代160万円
下位メーカーB:初期購入費が2000万円+電気代1000万円
ライフタイムコスト(生涯払うお金)を考えると
Aのメーカー:2660万円に対し Bのメーカー:3000万円になります。
高く買って、安く抑える。もちろん住んでいる間の快適性は言うまでもありません。
『安物買いの銭失い』とはこういったことを意味するのでしょう。
省エネルギー性能が悪いという事は、断熱性能や気密性能が悪いことに繋がります。
すると、家自体に【 結露 】が発生する危険性が増えるのです。
家で起こる結露は、家自体の寿命を縮め、住む人の健康にも悪影響を及ぼします。
まとめ
30代で家を購入する世代の方は、最低50年以上の試算でライフタイムコストを計算することをおすすめします。その理由は、平均寿命が延びているからです。
日本人の平均寿命は、2016年「男性80.79歳」:「女性87.05歳」でした。
2017年の発表では男性80.98歳:女性87.14歳と世界2位の長寿国となっています。
参考資料:政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室発表厚生労働省平成 28 年簡易生命表の概況PDF
今回は、電気代(暖冷房費)に的を絞ってお話をしてきましたが、別の視点でのライフタイムコストを検討することも必要です。
住宅と言う生涯で一番高価な買い物は、長く安心して住めることが前提条件として存在します。
地震による被害や、メンテナンスを怠ることで「住めるはずの家の寿命が短くなること」だけは避けたいところです。
後ほど、住宅産業協会の出している住宅のメンテナンスシートを元に生涯でどのくらいの「メンテナンス費用が必要になるのか」を見ていきたいと思います。
これも、ライフタイムコストの必須項目です。