省エネルギー性を確保するための断熱材の選び方
省エネルギー性を確保した住宅の特徴の一つに、冷暖房費が少なくて済む住宅があげられます。
その理由には【 断熱材 】という、熱を断つ素材の縁の下の力持ちがサポートしているからなんです。
省エネルギー性を確保するには断熱材選びが大事
省エネな住宅を造るには、壁・床・天井で覆われた空間をつくり、その覆われた空間から外に熱が逃げたり、入ってきたりするのを出来るだけ防ぐことが必要です。
その為には、壁・床・天井に入れる【 断熱材 】が重要な役割を果たします。
断熱材は何を使えばいいの?
断熱材は何でもいいわけではなく、いろいろな種類がありそれぞれに特徴があります。
スタンダードなものから、ハイスペックなものまで数多くあります。
例えば、よく聞く
- グラスウール ← この断熱材が一番シェアを持っています スタンダード!安価
- ロックウール
- ポリスチレンフォーム
- ウレタンフォーム ← ハイスペック!高価
などがそうです。
■断熱材は何を基準に選べばいいの?
断熱材選択の基準1
断熱材は優れた性能のものを入れるに越したことはありません。
素材そのものの熱伝導率で判断することができます。
熱伝導率とは
熱の伝わりやすさを数値化したものです。
単位は、W/(m/k)で表され、0に近ければ近いほど高性能となります。
断熱材選択の基準2
しかし、それだけでは判断が難しい一面を持っています。
例えば)
ハイスペック断熱材の熱伝導率が 0.28 の場合と
スタンダード断熱材の熱伝導率が 0.36 だった場合
ハイスペック断熱材のほうが良い事は誰でもわかります。
しかし、 ハイスペック断熱材よりスタンダード断熱材の厚みが2倍あった場合
スタンダード断熱材を使用したほうが断熱効果は高くなり優れた数値となります。
ただし、住宅に採用するの断熱材は構造別に使用できる厚みに限界があります。
同じ厚みしか入らない場所には、ハイスペック断熱材を採用するほうが効果を発揮します。
参考:4寸角の柱の内断熱の場合 最大約12cm
2×4の内断熱の場合 最大約 9cm
2×6の内断熱の場合 最大約14cm
外貼断熱の場合 最大約5cm
< 断熱材の熱伝導率一覧または記事はこちら >
費用対効果で選ぶ:コストパフォーマンス
一般的には、ハイスペック断熱材ほど効果が高くコストも高くなります。
日本で一番多く使われている断熱材の一つ、グラスウールはスタンダードのものが多く使われ、コストは安価になります。
高ければ高いほうが良いというより、費用対効果を考えバランスの取れた検討をする事が重要です。
断熱材の経年劣化を考える
住宅は、長きに渡り使用するものになるので、建築当初の性能をどれだけ維持できるか?も重要なポイントです。
住宅展示場などに行き話しを聞くと、
「 グラスウールは壁内結露が起き湿った断熱材がカビを誘発するので避けたほうが良いですよ。 」
なんて話を良く聞きます。
これはちょっと勘違いしてしまいそうな説明です。
確かにグラスウールは、湿気が侵入すれば溜め込むような構造になっていることは事実でしょう。
しかし、グラスウール断熱材は全てカビてしまう、と誤解を招きかねない言い回しとなっています。
建築中にしっかりとした丁寧な施工をすれば、どの断熱材も長持ちします。
要は、結露を起こさせない施工を丁寧に行えるかどうか?が問題になるのです。
一般的に、ローコストで建てる住宅はコストの掛かりにくい安価なグラスウールを使用する頻度が高くなります。
家自体の価格が安いのだから仕方がありません。
そして部材だけによらず、施工する人件費も安く納めることが必要になります。
そのようなことから、しっかりと丁寧な施工をする時間が無かったり、
大手では雇ってくれないような職人を安価で雇ったりすることで施工がうまくいかないのです。
「 いいや!私は安くやるけど、施工も時間も惜しまないで丁寧にやりますよ! 」
なんて心意気のある方はあまり見かけません。
ローコストになればなるほど、時間との勝負なので時間がかけられないのです。
結果。断熱材の寿命(経年劣化)を大きく左右するのは施工精度です。
よってグラスウールが一番腕を必要とする断熱材と考えます。
※断熱建材協議会では、施工例として曲がったり、押し込んだり、寸足らずだったりとNG例を示しています。
施工品質により、本来の断熱性能が得られないという事についても記載しています。
参考)
グラスウール 36k の場合
良い施工状態で得られる熱貫流率 0.36 ← この数値は0に近いほど断熱性が良い
断熱材の寸法が著しく大きく全体を押し込みすぎた状態では 熱貫流率が 0.44 に低下
寸法が足らず、両端に隙間が出来た状態では 熱貫流率が 0.57 に低下
断熱材の寸法が著しく大きく両端を押し込みすぎた状態では 熱貫流率が 0.80 に低下
良い施工状態と悪い施工状態では、熱貫流率の差が約倍となっています。
断熱材に100万円かけていたならば、その効果は、50万円分にしかならないという悲しい施工例です。
施工が悪ければ、断熱性能が確保されず、省エネ効果も半分になってしまいかねません。
断熱材選定にかかわる施工品質
壁の中の断熱材を例にお話しします。
家の中と外の熱を断つ(断熱材)ことにより、外の影響を受けにくくするのですが、隙間(C値)が多く存在するとそこから外気、内気の侵入・流入が起こり、温度差による壁内結露が起きます。
壁内結露は、断熱材の性能を著しく低下させるだけでなく、カビの発生を誘発させます。
壁の中がびちゃびちゃに濡れる事で構造材は腐り、シロアリの好む環境が作り上げられます。
日本には四季があり毎年結露発生が起き、住宅の強度が年々下がっていきます。
すると、大きな地震が来たときにひとたまりもなく倒壊・半壊となってしまうのです。
最近起きた、熊本地震や東日本大震災、阪神淡路大震災での現地調査でもシロアリ被害・結露による腐りなどの
被害があった住宅は、倒壊・半壊の被害が集中していたという報告が上がっています。
倒壊の原因、シロアリの好む湿気。湿気を作る施工の悪さ、全てが施工品質から来ることが分かります。
施工品質が十分でないなら、湿気を溜め込むような断熱材は使用を避けたほうがいいでしょう。
施工品質が家の良し悪しを全て物語る 現場の綺麗な業者を選ぶことが第一です